乙山色彩工房事件(京都地判平29・4・27) 「専門業務型」のデザイナー、割増賃金を求める 裁量労働制 代表者選出といえず
絵画制作や建造物の色彩修復のデザイナー4人が、専門業務型裁量制の適用はないとして割増賃金等を求めた。京都地裁は、協定届上の過半数代表者が会合や選挙を行っていないと述べるなど選出方法は不明で、就業規則案も制度導入の記載のみで周知といえるか疑問として、適法な手続きとはいえないと判断。役付手当の額や労務管理の権限等から管理監督者性も否定した。
選挙など手続き欠く 管理監督性も否定
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、日本画の画材を使用した絵画制作、彫刻などの彩色および修復、寺社等に出向き現地での絵画制作、建造物の彩色等の請負を業とする会社である。Xら(4人)は、平成24年4月21日以前または同年6月1日以前に、Y社との間で、いずれも期間の定めのない労働契約を締結したものである。
Y社は平成23年4月20日、従業員Zとの間で、専門業務型裁量労働制の労使協定を締結し、同月21日に就業規則を改定して同制度を採用し、いずれも、労基署に届け出た。
X1は、某部技術課課長職にあったが、平成25年12月に係長に降格され、役職手当が月7万円から3万円に減額された。翌年4月からは(Y社主張によれば)賃金支給名目区分変更に伴い固定給部分が減額されている。
Xらは、いずれも専門業務型裁量労働制の対象であったが、平成26年5月13日、Y社に対し、未払い時間外労働手当の支払いを催告し、同年10月15日に本件訴訟を提起した。Y社は、Xらについて、専門業務型裁量労働制の適用対象であるとともに、X1に対しては、労基法41条2号の管理監督者であると主張した。
X1は、本件訴訟の提訴後の平成27年2月10日に、Y社に対して、同年3月20日付で退職する旨の退職届を提出した。Y社側より退職金25万円の他には互いに債権債務関係がない旨の合意書案が送付されたが、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら