凸版物流ほか1社事件(さいたま地裁川越支判平29・5・11) 工場内に待機させ欠員出れば採用の日々紹介は 職安法違反も賠償は認めず
「日々紹介」は違法な労働者供給として、労働者が人材紹介会社や請負会社に慰謝料等を求めた。労働者は「元」と現場待機のため1時間の労働契約を結ぶ一方、欠員が出れば「先」と都度契約していた。裁判所は契約の時間帯が20分重複し、二重の雇用関係にあるなど職安法44条違反としたが、同条は行政取締法規に過ぎず、就労の期待も法的保護には値しないとした。
契約時間帯が重複 行政の取締法規で
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
① 原告は平成24年3月頃、被告Y1(労働者派遣事業・職業紹介事業を事業目的とする)に派遣スタッフとして登録して日雇派遣労働者として稼働し、同年10月からは、被告Y1の職業紹介(日々職業紹介)を受け、被告Y2(倉庫業等を事業目的とする)に雇用されて就労していた。
② 平成24年6~8月にかけて、被告Y1は、原告との間で、日雇派遣労働契約を締結しながら、派遣先の都合を理由に、派遣労働契約のキャンセルを行ったことが4回あった。被告Y1は、原告に対し、このキャンセルの連絡をメールで行ったが、この際、他の仕事を案内するので電話するよう伝えること等もした。
③ 平成24年10~11月にかけて、被告Y1は、原告を被告Y2に職業紹介する際に、原告との間で、午前8時20分~9時20分までの間、被告Y2のセンター内の食堂において現場待機することを内容とする労働契約を締結し、被告Y2において欠員等が生じた場合には、原告と被告Y2との間で、午前9時~午後5時までを就業時間とする労働契約を締結したことがあった。
④ 被告Y1らは、労働者に対し、就労日の翌日に給与を支払う即給サービスの提供ないし利用を認めていたが、給与の支払いを振込みで行う場合には、振込手数料を控除していた。原告は、被告らの行為により精神的苦痛等の損害を被ったと主張して、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償金の支払いを求めた。…
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