全日本手をつなぐ育成会事件(東京地判平29・8・10) 法人解散も事業継続、組合員が地位確認求める 整理解雇に近似し法理適用
社会福祉法人の解散による解雇を無効として、労組の分会長ら2人が地位確認を求めた。事業が継続する点につき東京地裁は、整理解雇に近似する場面としたうえで4要件を満たすとした。残りの職員は退職金を増額した希望退職の募集に応じたことなどを評価。継続先は財政状況から職員を雇用せず、業務は都道府県会などが分担し、雇用を引き継ぐべきとはいえないとした。
4要件すべて充足 財政難で雇用困難
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
知的障害者の相談に応じる事業、知的障害者支援・育成を目的とする団体との連絡および助成に関する事業を行うことを目的とする社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会(A法人)が、A法人の所属する連合会(平成26年7月24日に設立された権利能力なき社団。B連合会)に事業を承継させ、解散をするために、A法人の職員6人全員に対して希望退職等を実施した。そのうちの4人が同希望退職に応じたところ、同希望退職に応じなかった甲1および甲2を平成26年5月31日付で解雇し、その後、A法人は同年10月1日に解散した。
これに対して、甲1および甲2が、同解雇が無効である旨をそれぞれ主張して、A法人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認およびバックペイの支払いを求めるとともに、本件各解雇が無効であることを前提に、A法人とB連合会とは実質的に同一である旨を主張して、法人格否認の法理により、B連合会に対し、上記と同様の請求をした。そして、さらに、甲らはA法人およびB連合会が共謀して不当な本件各解雇を行い、もって、甲らに対する不法行為を行ったと主張し、A法人およびB連合会に対し、共同不法行為に基づき、慰謝料の請求等を行った。…
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