サニックス事件(広島地裁福山支判平30・2・22) 48歳新人“地獄の研修”で障害負い損害賠償請求 歩行訓練中の安全配慮怠る
新人研修の「24キロ歩行」で膝関節等を負傷し、労災認定を受けた48歳男性が、会社に損害賠償を求めた。研修の講師養成学校では、「地獄の訓練」と称していた。裁判所は、訓練を中断せず病院受診を認めなかったとして安全配慮義務違反と判断。年齢や体力差を考慮せずムリな研修とした。百キロの体重は病的肥満ではないとして、素因による賠償額減額は認めなかった。
病院を受診できず 肥満でも減額なし
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
原告(当時48歳)は、平成25年8月16日頃被告と雇用契約を結び、被告に入社した。原告は、身長171.3センチ、体重101キロの肥満体であった。被告は、各種ソーラー機器および空調機器の製造・販売等を業とする会社である。
原告は、平成25年8月18日から同月30日まで、新人研修を受けた。研修期間中は、研修センター内の宿泊施設に宿泊しなければならず、公休日とされた日(1日)は外出が可能であった。新人研修の1つに歩行訓練があった。歩行訓練は、一定速度で一定の距離を歩く練習を繰り返したうえで、27日に「サニックススピリッツ」という名称で、24キロを制限時間5時間で完歩するという訓練(以下「スピリッツ」という)であった。スピリッツは、あきらめない・最後までやり通す社員の養成をめざすという信念が反映されたものであり、完歩しない参加者は、被告の正社員になれないと講師からいわれていた。
21日の歩行訓練の初日、原告は、右足首をひねり、転倒した。原告は、P4講師に病院に行かせて欲しいと頼んだが、認めてもらえなかった。もっとも、P4は、同日に原告から提出された業務日報に、自分の体調をよくみながら研修を行ってくださいと記載した。…
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