相互信用金庫事件(大阪高判平17・9・8) 退職金の増額規定根拠に破綻信金元職員が請求 使用者の自由裁量内と棄却
金融庁の破綻認定を受け解散した信金から解雇された元職員らが、退職金や退職年金の規定を「自らの判断で解釈適用の余地のない覊束(きそく)裁量規定」と解し、退職金の増額、年金支給などを求めた控訴審で、大阪高裁は一審(大阪地判平15・11・26)の判断を支持し、「裁量が覊束される定めは存在しない自由裁量規定」と認定し全て棄却した。
具体的な定めなし 賞与不支給も妥当
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
相互信用金庫(被告、非控訴人)は平成14年1月25日金融庁から破綻認定を受け、同年6月1日に大阪信用金庫に事業譲渡を行い、同日をもって解散し、清算手続に入り、同月9日、全職員を解散を理由に解雇した。元職員の甲ら(原告ら・控訴人)は①退職金の増加支給分、②退職年金、③平成14年度夏季賞与などの支払いを求め提訴した。
甲らの主張の要点は、金融庁の破綻認定に基づく解散を理由に解雇されたのであるから、退職金規定の増加支給規定は自由裁量規定ではなく覊束(きそく)裁量規定であり、「経営上の都合によりやむを得ず解雇された場合であって、解雇を予告した日から解雇した日まで特別の功労があったときは、増加支給する」と解釈すべきで、また退職年金規定は、文言上は裁量規定とされるが、退職金の増加支給条項が熟練労働者の定着促進という目的の規定であり、熟練労働者である甲ら元職員が事業譲渡の前日まで作業に従事することが不可欠であったことからすれば、同規定は自由裁量規定ではなく覊束裁量規定で、その内容は、「経営上の都合によりやむを得ず解雇する場合であって、解雇を予告した日から解雇する日まで特別の功労があったときは、退職年金を支給する」と定めた規定と解釈すべきで、退職年金支給請求権を有する。
平成14年度夏季賞与支給については、毎年6月および12月に、賞与を支給することが慣行であったと認められるから、上記内容は労働契約の内容というべきで、考課査定をせず夏季賞与を支給しなかったことは労使慣行を一方的に破棄するものであり、無効である。
判決のポイント
(1)退職金増加支給に対して
退職金規定9条は、…
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