アートネイチャー事件(東京地判平17・2・23) 不正競争防止法違反と転職した店長らを訴える 習得の一般知識・技能 自由利用でき制約なし
店長や管理職に同業他社へ転職された会社が不正競争防止法違反、競業避止義務違反として訴えたが、東京地裁は不正行為の事実証明が不十分として同法違反の主張を退け、競業避止義務の範囲を企業固有の技術・情報に限定し、業務上で習得した一般的知識・技術は職業選択の自由を保障する上で制約できず、従業員は自由に利用できると判示した。
証明ない漏洩事実 競業避止義務の対象外
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、かつらの製造・販売、増毛方法の指導、かつら利用者への理容・美容などの役務を提供する会社である。Y2~5は、Xで店長、カウンセラー(営業職)、お客様サービスセンター課長として勤務していたが、平成13年6月から翌年10月にかけて相次いでXを退職し、Xの競合会社であるY1に入社した。
Xは、Yらが、顧客情報およびこれを含む顧客名簿について不正取得行為、不正取得後の使用行為など不正競争行為(不正競争防止法2条1項4号、5号、7号、8号)を行ったこと、Y2~5がY1に転職したことが競業避止義務違反であると主張し、不正競争行為の差止め・損害賠償請求を求めて提訴した。
なお、Y2~5は「(退職後、競合会社への)就職、役員就任、独立営業などをしない」、「禁止期間は、原則として退職の日から2年間、ただし、それより長期または短期の期間を定めた場合は、それに従う」 との誓約書を差し入れていた。
判決のポイント
1 不正競争行為の成否
Xは、Yらによる営業秘密の不正取得・利用に関して、…
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