ヨドバシカメラ事件(東京地判平17・10・4) 派遣元社員の暴行で派遣先にも損害賠償を請求 安全配慮の内容に含まれず
派遣元従業員から暴行を繰り返された派遣労働者が、安全配慮義務違反などを理由に派遣先会社を含め損害賠償を請求した事案で、東京地裁は違法な二重派遣と認定しつつ、派遣先会社には加害従業員を指揮監督すべき関係や予見可能性がなく安全配慮義務の内容に含まれないと判示、加害従業員とその使用者に損害賠償を命じた。
指揮監督関係なし 危険の防止はムリ
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
家電量販店Y社(㈱ヨドバシカメラ)は、F社(電気通信事業等を目的とする株式会社)と携帯電話契約取次等の代理店契約を締結し、労働者派遣事業等を目的とする有限会社であるT社およびE社は、F社から指定地域の代理店店舗内における携帯用電話機の販売業務を受託する契約を締結していた。
甲は平成14年10月下旬からT社と、同15年1月1日からE社と雇用契約を結び、Y社店舗で同14年11月15日から同15年3月13日まで、携帯用電話機の販売業務に従事した。この期間中に、
①平成14年11月29日、T社内で接客訓練中に、T社従業員Aが甲の頭部を、販促用ポスターを丸め約30回、クリップボードで約20回殴打した(第1の暴行)
②同年12月頃、Y社売場で、Y社従業員Bが、仕事上のトラブルについて謝罪していた甲の大腿部を3回にわたって強く蹴った(第2の暴行)
③平成15年3月13日、遅刻した甲が、虚偽の出社時間を電話連絡したことをめぐり、同日深夜、E社内でE社従業員Cが、E社の社長Dが見守る中、甲の左の頬を手拳で数回殴打し、右大腿部を蹴り、頭部を肘や拳骨で約30回殴打した(第3の暴行)
④翌14日、甲が出社しなかったためCが甲の母親である乙宅を訪れ、手拳や肘で殴打したり、足や膝で蹴る暴行を合計30回にわたって加えた(第4の暴行)
⑤第4の暴行の後、甲はCの指示でE社に出向き、遅刻と虚偽連絡について謝罪を強いられた(強制謝罪)
という事件があり、④により甲は肋骨骨折などの傷害を、また母親の乙はストレス反応など精神疾患にかかった。
甲および乙は、…
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