三共(寡婦嘱託雇止め)事件(静岡地裁浜松支判平17・12・12) 寡婦嘱託で11年間契約更新、雇止め不当と訴え 継続への期待に合理性ない ★
通災で死亡した夫の勤務先の寡婦嘱託制度で11年間勤務した女性の雇止めについて、静岡地裁浜松支部は契約終了の合意はないとしつつも、契約は期間の定めのある契約で、期間の定めのない契約に転化もしくは同様の契約と実質的に異ならない状態とはいえず、原告の継続に対する期待の合理性を否定し、解雇権濫用法理の類推適用はできないとした。
合意に至らずとも有期の定めの範囲
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Xは、平成5年2月1日、嘱託社員として契約期間1年でYに雇用され、毎年、期間雇用契約の更新を繰り返し11年間勤務してきた。Xの夫である甲は昭和54年4月にYに入社したが、平成4年9月22日、通勤災害により死亡した。
Yには、従業員が不慮の事故や病気で死亡した場合に、慣例的に創設された寡婦嘱託制度があり、寡婦が希望した場合に嘱託として採用し、就業条件は嘱託就業規則を適用した。寡婦であっても子女がいない場合、子女が既に高校を卒業している場合には制度の適用はなかった。なお、平成5年4月1日、「遺児1名につき月額3万円、満18歳到達までとする」遺児育英年金制度が新設され、経過措置として過去3年間の該当者についても同一の措置を行うこととし、その後は原則として寡婦嘱託制度による採用はなくなった。
Xの勤務地は自宅から最も近い浜松出張所とされ、給与も通常の嘱託よりも割高に設定された上、通常住宅給はないところ、その要素も加味した金額として20万円程度に設定されており、配置転換や異動はなかった。Xの業務内容は、リーフ、印刷物の保管・管理出勤簿の管理、お茶くみ等の雑用であった。…
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