光輪モータース事件(東京地判平18・2・7) 通勤費35万円を不正に受給、懲戒解雇は正当か 制裁としては重きに過ぎる
2006.06.26
【判決日:2006.02.07】
4年8カ月にわたって定期代を約35万円不正に受給したとして懲戒解雇された従業員が、地位の確認および賃金の支払いを請求したケースで、東京地裁は賃金カットの穴埋めに通勤時間や徒歩の距離が長くなる自らの負担で節約しようとしたもので、過大請求などに比べ悪質ではないと認定、企業秩序維持のための制裁としては重きに過ぎると判示した。
詐取目的ではない 自らの負担で節約
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y社では、「通勤交通費は実費を支給する」旨の労使合意があったが、Xは通勤経路の変更により交通費が減額したにもかかわらず、会社に申告しなかった。その結果4年8カ月にわたり水増しした定期代を不正に受給したとして、懲戒解雇された(通勤費実費との差額は1カ月6681円、総額約35万円)。
Xは、懲戒解雇は無効であるとして、地位の確認および賃金の支払いを求めて提訴した。Xは、Y社では、定期代を申請しながら定期券を購入しないでオートバイでの通勤が認められており、本件のように申告経路以外で通勤して差額分を取得することを一方的に非難するのは酷であり、オートバイ通勤との均衡から考えても懲戒解雇相当とはいえないと主張した。また、団交で協議するとしながら、結局協議されないまま解雇がなされ、手続に重大な瑕疵があること、Yは組合を敵視し、本件を奇貨として組合員であるXを解雇したもので不当労働行為に該当することなどを主張した。…
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平成18年6月26日第2590号14面 掲載