丸一運輸事件(東京地判平18・1・27) 歩合給運転手らが退職後に割増賃金を請求する 証拠検証し時間外分認定へ

2006.07.10 【判決日:2006.01.27】
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 配達や集荷に関する歩合給で働く運転手5人が退職後に時間外・休日労働の割増賃金を請求したが、会社は所定時間で終了する業務量などと争った。東京地裁は賃金体系上歩合の達成が不可能として、労使の主張を勘案しつつ①出発準備時間、②走行時間、③配達先での所要時間を検証した上で、時効前2年間の時間外労働を認定、支払いを命じた。

労使の主張を勘案 時効前の2年間分

筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)

事案の概要

 運送会社(丸一運輸㈱)で運送業務を担当する甲ら5人が、時間外労働賃金の支払いが一切ないとして、割増賃金の支払を会社に請求した。これに対して会社は、甲らの作業は1日8時間以内で十分に終えることのできる内容であり、実際にも甲らは所定時間内に作業を終えていたか、終えることができたもので時間外労働は発生しないとして争った。

 甲らの仕事は、主として割り当てられた担当地区を自己使用車両を運転して配送業務をすることであるが、1日の作業としては自宅を出発し、会社に到着後、車両の整備点検をし、配送予定の荷物をルートに合わせ積み込み、荷物管理のパソコンに入力を済ませた後に出発する。出発は午前6時頃で四つ木インターから首都高速に乗り、土浦インターを降りて、茨城地区内の約40カ所の配送先を回り、時折、荷物を集荷して自宅へ直帰するというものである。

 甲らの賃金は歩合給で加算項目(配送歩合、集荷歩合)から減産項目(償却費や車検費用などの管理費、燃料費、貨物弁償負担金、通行券など)を控除して算出するが、加算項目から減産項目合計金額を減じた金額が30万3000円に満たない場合、30万3000円を歩合保障金額として算出することとしている。…

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平成18年7月10日第2592号14面 掲載
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