農林漁業金融公庫事件(東京地判平18・2・6) 脳機能障害で就労能力ないと退職促す判断は… 労務の提供は不可能で相当
2006.07.31
【判決日:2006.02.06】
心肺停止から蘇生したものの高次の脳機能障害が残り退職したケースで、約10年後に元職員の成年後見人となった実母が退職は無効で休職期間相当の2年間の賃金などを求めた事案に対し、東京地裁は退職意思表示は無効としつつも、客観的に労務の提供が不可能と判断して休職を命じなかったことは相当で、退職以後の賃金請求権を有しないと判示した。
雇用継続義務なし 休職命じなくても
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、Y公庫在職中に、自宅で心肺停止し、低酸素脳症により高次脳機能障害を負ったXが、意思無能力であるにもかかわらずY公庫の勧めにより退職したが、この退職は無効で、Xが発作で倒れた平成5年5月5日以降、休職等により、少なくとも同7年5月26日までは在職できたはずとして、その間の賃金の支払いと、無効な退職によりY公庫に在職できた期待利益を失い、精神的損害を被ったとして損害賠償を請求した。
判決のポイント
(1)本件退職時、原告は、意思無能力の状態にあり、本件退職の意思表示は無効である。
(2)被告の就業規程24条は、「休職を命ずる」と規定しているから、原告の指摘するとおり、被告には休業を命ずるか否かの裁量はないようにも解される。
しかし、他方で就業規程は、解雇の要件を「精神又は身体に著しい障害があるため公庫の業務に耐えられない場合」と定めており、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
平成18年7月31日第2594号14面 掲載