ネスレ日本事件(大阪高判平18・4・14) 家族介護者への配転は無効と地裁、会社が控訴 不利益の程度から原審維持 ★

2006.08.21 【判決日:2006.04.14】
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 部門の廃止に伴う配転命令について、家族介護者への配慮に欠け著しい不利益があるとして無効と断じた地裁判断に対する控訴審で、大阪高裁は一審と同様、配転の必要性を肯定しつつも家庭崩壊につながる恐れなど通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせると認定、配転命令権の濫用で無効と判示し、会社の控訴を棄却した。

甘受の範囲超える 配慮義務に応えず

筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 X1・2は、Y社の姫路工場において勤務していたが、Yは、Xらの勤務する係の外注化・廃止を決定し、Xらに対し霞ヶ浦工場への転勤を命じた。

 これに対しXらは、現地採用であるから勤務地限定特約がある旨を主張し、また、X1は妻が精神病に罹患しており、夫のX1の援助が不可欠で、X2は実母が骨粗しょう症、脳梗塞後遺症、パーキンソン症候群等に罹患し要介護2の認定を受け、妻と協力して介護を行っていることからX2が不可欠の存在であり、いずれの場合も、家族もともに転居した場合、環境変化により症状が悪化する可能性があることなどを理由に、本件配転命令に応じられないとし、霞ヶ浦工場に勤務する義務のないことの確認および配転命令後の賃金の支払いを求めた。

 Xらはまず仮処分を申請し、裁判所は、勤務地限定特約はなく配転命令権は存するが、本件配転命令は著しい不利益を負わせるものであって無効であるとした(神戸地姫路支部決平15・11・14)。次に、本案訴訟の一審判決も、著しい不利益を理由に配転命令権の濫用ありとして、本件配転命令を無効とした(同支判平17・5・20、本欄17年12月5日付掲載)。Yはこれを不服として控訴した。…

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平成18年8月21日第2597号14面 掲載
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