ノイズ研究所事件(東京高判平18・6・22) 代償不十分で無効とされた成果主義賃金の是非 柔軟さ欠けるも合理的措置 ★
代償措置が不十分として成果主義賃金への給与規程改正を無効とされた事案の控訴審。東京高裁は、新制度は職務内容と業績・能力評価による合理的な原資配分に改める相当なものと判示、代償措置については柔軟性に欠けるものの高度の必要性に基づく合理的措置とし一審判断を覆した。また職務の格付けは経営上の裁量的範囲に委ねられるとした。
一審の判断を覆す 格付けは裁量範囲
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人は、電子機器の電源雑音を検査する測定器の製作および販売、コンピュータ利用施設の電磁波の影響調査、測定等を目的とする発行済株式総数19万株、資本の額9500万円の株式会社である。被控訴人らは、その従業員であり、平成13年当時おおむね40歳代であった。
控訴人は、従前、職能資格制度を基本としつつも実質的には年功型の賃金制度を採っていたが、主力商品の競争が激化した経営状況の中で従業員の労働生産性を高めて競争力を強化するには、個々の従業員の従事する職務を格付け、その格付けに応じた金額の職務給を支給し、業績、能力の評価によって降格もあり得ることとする成果主義に立つ賃金制度に改める必要があると判断し、平成13年4月1日、就業規則の性質を有する給与規程等を変更して賃金制度の変更に踏み切った。
被控訴人らは、その賃金制度の変更に際し、従事する職務についてされた格付けが低かったことなどから基本給が3万7750~7万5050円減額となるなどの不利益を受けた。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら