A保険会社上司事件(東京高判平17・4・20) 成績不振者への叱咤メール、職場全員に送信!? 表現が限度超え相当性欠く
「やる気がないなら辞めるべき」というメールを、成績不振の課長代理本人のほか十数人の同僚に送信したのは、名誉毀損に当たるとして上司に慰謝料を請求した事案。一審は指導の一環と棄却したが、控訴審では、表現が許容限度を超え相当性を欠くとして5万円の慰謝料を認容した。なお本件被控訴人の上告は最高裁で不受理となった(平17・9・20)。
名誉毀損に当たる 5万円の慰謝料を
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
Xの平成13年度および14年度の総合考課・年間考課(賞与)は、ともにC(7段階評価の下から2番目)であった(なおXは別訴でこの点の人事評価についても不当として提訴)。Xは、かねてから担当案件の処理状況が芳しい成果を上げることができず、SC(サービスセンター)のユニットリーダーDから強い叱咤激励を受けたが、その後の処理状況も芳しくなかった。
平成14年12月18日、Dは、Y(SC所長、被控訴人)やXを含むユニットの従業員に対し、「甲野KDもっと出力を」(KDは課長代理の意と思われる)と題するメール(以下「Dメール」)を送信した。Yは、Dメールを見て、同日、ポイントの大きい赤文字で、「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても、会社にとっても損失そのものです」などと記載したX宛メール(以下「本件メール」)を、DやXを含むユニットの従業員十数人に送信した。Yが、本件メールを送信したのは、Xに業務に対する熱意が感じられず、所属ユニットの3番目の席次である課長代理の立場にもかかわらず実績を上げないことが、他の従業員の不満となっていることから、Xへの指導を行うとともに、Dメールの内容を支持することを表明しようとするものであった。…
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