富士電機E&C事件(名古屋地判平18・1・18) うつ病歴のある社員の自殺で配慮義務問われる 完全寛解の状態で違反ない
2006.11.13
【判決日:2006.01.18】
うつ病による休職後、本人の希望で復職し、その後、転勤先で自殺した社員の遺族が、安全配慮義務違反に基づく損害賠償等を求めたもの。名古屋地裁は、転勤後は症状の軽減が推認でき、完全寛解の状態にあったと認定、職場復帰時の経緯に慎重さを欠くとしつつも、安全配慮義務違反ということはできず、業務の過重性も否定し請求を斥けた。
慎重さ欠くも相応 業務の過重性否定
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、Y社の従業員であったAが、うつ病にり患したため、一時休職した後、職場復帰したところ、Y社がAを中部支社に転勤させたうえ、過重な業務に従事させ、うつ病を再発させた結果、Aを自殺に至らしめたとして、Aの遺族が、Y社に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求した事案である。
Aは、昭和30年生まれで、同49年4月にY社に入社し、電気工事の予算管理、現場施工管理等の業務に従事していたが、平成9年6月、関西支社の技術第三部技術課長として大阪に単身赴任した。
平成9年12月、AはB医科大学C病院において、「自律神経失調症により10日間程度の休養加療を要する」旨の診断書の交付を受け、同日から職場を離れ、自宅静養した。その後、さらに3カ月程度の休養加療を要する旨の診断書が作成され、Y社に提出された。…
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平成18年11月13日第2608号14面 掲載