旭ダイヤモンド工業事件(東京高判平17・6・29) 名誉・信用毀損する労組の街宣活動差止め請求 相当性の範囲超えると認容
労組の解雇撤回闘争に伴う街頭宣伝活動が解雇有効の判決確定後も継続したため、会社、経営者が当該行為の差止めと不法行為による損害賠償を請求したもので、一審東京地裁は、会社の入居するビルや経営者の自宅近辺での抗議活動を禁止し損害賠償も容認したため、解雇労働者や労組が控訴した。東京高裁は大筋で原審の判断を支持し、控訴を棄却した。
基本的権利を侵す 正当化はできない
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
勤務成績不良を理由に平成11年4月、普通解雇(本件解雇)された従業員Aは、同年5月合同労組に加入し同労組の執行委員Bらと共に、会社が入居するテナント・ビル前で抗議集会を開いたり、当時の代表取締役社長・甲宅に押しかけ、ハンドマイクで抗議声明を読み上げるなどの街頭宣伝活動を繰り返した。
本件解雇について、会社は同年8月、雇用関係不存在確認請求を提起し、またAも雇用契約上の地位確認等の反訴を起こした。会社の請求に対し水戸地裁下妻支部は本件解雇を有効と判断し、東京地裁はAの反訴をすべて棄却した。Aらは東京高裁に控訴したものの棄却され、最高裁への上告・上告受理申立にも上告棄却・上告不受理の決定があり、Aが会社の従業員たる地位にないことの公権的な判断が確定した。
本件は、A、Bおよび労組の街宣活動により、会社と甲らの名誉・信用が毀損され、会社の営業を営む権利や甲の平穏に生活を営む権利が侵害されたとして、面会の強要や街宣活動の差止め、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案で、一審の東京地裁(平16・11・29)は、各請求をいずれも大筋で認めたため、A、Bおよび労組が敗訴部分について控訴した。…
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