丸林運輸事件(東京地決平18・5・17) 仮眠の前に一杯、飲酒運転理由の懲戒解雇は? 就業規則の懲戒条項 周知手続とらず無効 ★
2007.01.15
【判決日:2006.05.17】
労組の委員長と書記を務める運送会社の運転手が、仮眠前の一杯で飲酒運転とみなされ懲戒解雇されたため、労働契約上の地位確認と賃金の仮払いを求めた事案で、東京地裁は、周知手続をとっていない就業規則は法的拘束力が無く懲戒権を有しないとし、対立労組員による証言を斥け、過去の事故など解雇理由の事後的付加は許されないと判示、賃金仮払いを認容した。
裏付ける証拠ない 理由の後付け付加
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X1およびX2はY運送会社のトラック運転手で、平成17年12月8日、組合の会合を兼ねた食事後、翌早朝出庫のためトラック内の仮眠用ベッドで寝ることとし、コンビニの駐車場に停めたX1のトラック内で午後8時から9時頃まで、購入したビールやトラックに常備していた焼酎を飲んだ。この間、暖をとるためエンジンをかけていた。
X2が自分のトラックに戻り、暖をとるためにエンジンをかけていたところ、対立組合の役員である配車係長や班長が来て、「飲酒運転だ」「聴聞会を開く」などと責め立てて立ち去った。翌日以降に聴聞が行われ、Yは14日にXらを懲戒解雇した。
なお、聴聞時にXらが就業規則の開示を求めても、Yは一部分のコピーを渡すだけで、全部を開示しようとしなかったが、懲戒解雇後の同月19日以降、Yは就業規則をカウンターに備えつけた(労基署には平成7年に届出られていた)。また、Xらの労働契約書には、…
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平成19年1月15日第2616号14面 掲載