日音事件(東京地判平18・1・25) 競業会社に一斉転職した社員が退職金を請求 勤続の功抹消に反証できず ★
2007.02.12
【判決日:2006.01.25】
競業会社に社員が一斉転職した事件で、会社が退職金支払いを拒絶した事案。東京地裁は、懲戒解雇が有効な場合は、勤続の功の抹消に反証できない限り、著しく信義に反する行為が立証されるとし、退職金不支給条項の適用を有効として請求を棄却した。なお、就業規則の法的効力に関し、「実質的に周知の措置がとられていれば足りる」と判示している。
懲戒解雇事由あり 不支給措置は有効
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
X1ないしX9ら9人は、Y社の従業員であった。Y社の関連会社であるK社の取締役(営業責任者)であったAは、平成15年6月、K社を退職し、同年7月1日、競業会社であるN社を設立し、K社の従業員約500人は7月11日、一斉に出社せず、K社を退職しN社に入社した。X1ないしX6も、7月11日に退職届を提出しN社に入社した。また、X7ないしX9は、勤務先の営業所閉鎖に伴い10月20日付けでY社を退職し、N社に入社した。X1ないしX9は、Y社に退職金の支払いを請求したところ、Y社がX1ないしX6は懲戒解雇により、またX7ないしX9は退職時の業務引継ぎ不履行を理由にこれを拒否したため、本訴を提起した。
判決のポイント
1 就業規則の効力
就業規則が法的効力を有するためには、従業員代表の意見聴取、労基署への届出までは要せず、従業員に対し、実質的に周知の措置がとられていれば足りると解するのが相当である。なぜなら、…
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平成19年2月12日第2620号14面 掲載