足立労基署長(日昇塗装興業)事件(東京地判平18・6・26) 暑熱作業中の死亡で労災保険不支給判断の是非 熱中症の業務起因性を認容 ★
2007.03.26
【判決日:2006.06.26】
最高気温が28度を超える中でアスファルト舗装工事に従事した作業員の死亡事件で、遺族の労災請求を持病による急性心不全として不支給処分とした労基署長に対する行訴事案。東京地裁は、詳細な医学的所見をもとに、熱中症は暑熱な場所における業務に起因して発症し得ることが医学経験則上認められるとし、業務起因性を認め、不支給処分を違法として取り消した。
発症する環境下に 持病論の主張覆す
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
平成6年12月1日、Aは訴外Z社に就職し、一般作業員として道路塗装工事に従事していた。
道路舗装工事の作業員は、安全のため夏でも長袖、長ズボン、安全靴、軍手、ヘルメットを着用している。また、アスファルトの温度は約145度にもなるため、作業中は多量の発汗を伴い、着ているシャツが汗で絞れるほどになる。
平成7年7月21日、Aは午前9時ころから午後4時過ぎまで、3度の休憩時間(午前10時30分ころから午前11時ころ、午後零時15分ころから午後1時15分ころ、午後3時ころ)を挟んで、アスファルト工事に関する作業に従事した。
同日の作業場所(東京都)の天候は、雨一時曇り、最高気温28.8℃(午後3時50分)、平均気温25.9℃、平均相対湿度83%、風速1.1m(秒速)であり、午後4時では、平均気温28.5℃、平均相対湿度73%、風速1.5m(同)であった。…
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平成19年3月26日第2626号14面 掲載