マッキャンエリクソン事件(東京地判平18・10・25) 平社員降級の管理職が地位確認と差額賃金請求 評価認めるに足る証拠ない ★
降級制度により非管理職に降級させられた管理職が、従前の地位の確認と賃金の差額の支払いを求めた事案。東京地裁は、非開示の降級基準を「著しい能力不足」の指標と位置付け、会社が主張するリーダーシップ欠如などの降級理由を検証し、そのすべてについて認めるに足りる証拠がないと認定、降級処分は裁量の範囲を逸脱し無効と判断。差額賃金の支払いを命じた。
勤務実績を再検証 降級基準に非該当
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、広告代理店である被告のメディアマーケティング本部業務部に所属する原告が、2003年4月以降、給与等級7級から同6級に降級されたことを不服として、降級前の地位にあることの確認と差額賃金の支払いを求めた事案である。
被告においては、2001年10月1日、旧賃金規程に替えて、成果主義賃金体系を基礎とする新賃金制度が導入され、降級制度も加わった。新賃金規程によれば、「降級 評価の結果、本人の顕在能力と業績が、属する資格(=給与等級)に期待されるものと比べて著しく劣っていると判断した際には、資格(=給与等級)と、それに応じて処遇を下げることもある」、「(注)降級制度に対する考え方 降級はあくまで例外的なケースに備えての制度…」と説明され、実際の評価制度の運用はマイナス3~プラス3までの7段階で評価し、マイナス1の評価を2年連続で受けた者、マイナス2の評価を当該年度受けた者を降級の対象とし、昇格会議で降級させるか否かを決定することとされた。しかし、この降級基準は従業員には明らかにされなかった。…
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