神奈川信用農業協同組合事件(最判平19・1・18) 解散予定で選択定年の申請拒否、割増退職金は 退職効果生ぜず請求権ない ★
選択定年制度の廃止前後に提出された職員の申請を拒否したため、割増退職金の支払いを求められた事案。最高裁は、不承認の理由が不十分として支払いを命じた一、二審判決を破棄、経営難から組織の譲渡解散は避けられず、退職者増による事業の悪化を防ぐ必要性を認め、退職申出の承認がなければ、割増退職金の発生を伴う退職の効果は生じないと請求を棄却した。
不承認に理由ある 原審判決を取消し
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
上告人は、農業協同組合法に基づく信用農業協同組合であり、就業規則で選択定年制を定めていた。上告人が選択定年制を設けた趣旨は、組織の活性化、従業員の転身の支援および経費の削減にあり、その適用には上告人の承認を必要とすることとされた。
上告人は、平成13年7月、神奈川県から自己資本比率の低下等を指摘されて指導を受け、同年8月、経営悪化から事業譲渡および解散が不可避となったと判断し、同年9月、「他の信用農業協同組合との合併が避けられない事態となっており、合併を実現させるためには、これ以上財務状況を悪化させないことが必要である。そのために本件選択定年制は廃止せざるを得ない。廃止することとした以上、本件選択定年制による退職の申出に対しては、既にされているものについても今後されるものについても承認をしないこととする」という趣旨の説明をし、大方の賛同を得た。その時点で、被上告人Aほか3人が選択定年制による退職の申出をしており、また、この後に、被上告人Bほか2人が選択定年制による退職の申出をしたが、上告人は、被上告人らほか5人に対し、選択定年制による退職の申出を承認しない旨を告げた。…
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