住友重機械工業事件(東京地判平19・2・14) 賃金減額反対の少数組合員にも効力は生じるか 経営危機回避で合理性ある
就業規則の性格を有する賃金規則を2度改訂した結果、賃金が10%も減額した少数労組加盟の元社員ら8人が差額賃金を求めた事案。東京地裁は、株価や債権格付けの低下による、経営危機回避を目的とした減額の合理性を認め、恒久的な措置でなく、99%を占める労組の同意により十分な利害調整を経て形成されているとし、不同意者に対しても効力は生じるとした。
恒久的削減でない 多数派同意を重視
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、機械・装置関連の総合設備設計・製造等を目的とする株式会社で、労働組合は社員の98.7%が所属する住友重機械労働組合のほかに4組合があり、このうち原告はJMIU支部に所属していた。
平成11年3月期から同13年3月期の連結決算および単独決算の当期損益で、被告はいずれも大幅な損失を計上し、単独・連結ともに資本欠損に陥った。平成13年度には、株価も下がり始め、同年12月には額面額以下の46円にまで低下し、債券格付けも「BB+」と評価された。
このような状況に危機感を抱いた被告は、平成13年12月、事業構造改革の促進と財務体質の強化を核とする経営改善に向け「SHI再構築策」を立案し、同施策の実現のために、在籍一般社員全員を対象とする平成14年、15年度の2年度にわたる総労務費の削減(年間で約15%、基準賃金で平均10%)等を骨子とする対策案をまとめた。
SHI再構築策の実施について労組と団体交渉を重ね、平成14年度の総労務費削減は原告所属のJMIU支部を除く労組との間で合意に至り、就業規則を変更して賃金の削減を行った。…
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