松下電器産業グループ事件(大阪高判平18・11・28) 企業年金2%減額は合法、受給者が控訴したが 改廃規定の合理性を認める
自社年金である「福祉年金」の給付率引下げは違法として効力を争った事案の控訴審。大阪高裁は、本件規程の変更可否について合理性・周知性を備えた年金契約であり、約款法理を採用し有効と判断。さらに業績の推移など、経済情勢等の変動を契機とする給付利率改定の必要性と改定後の利率の相当性という要件を満たしており、減額を有効とし、請求を棄却した。
“約款法理”で判断 周知や手続も相当
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xら101人はY社とそのグループ会社のOBで、Y社の福祉年金制度(自社年金)に加入し、年金契約を締結していた。
同制度は退職者の任意加入で、退職金の一部を原資として預り金に一定の利息(退職時期により7.5~10%の定率)をつけて基本年金として給付し、基本年金完了後は終身年金として基本年金の最終支給日の支給額と同額を支給するものである。この福祉年金規程(以下「本件規程」)23条1項には、「将来、経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合、あるいは法制面での規制措置により必要が生じた場合は、この規程の全般的な改訂または廃止を行う」との定めがある(以下「本件改廃規定」)。
Y社は平成8年、既受給者を除き年金の給付利率を引き下げ、同14年に既受給者の給付利率も一律2%引き下げた。Xらは年金契約に違反し違法・無効として、減額による差額の支払いを求めて提訴した。
原審(大阪地判平17・9・26)はXらの請求を棄却し、本件はその控訴審である。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら