明治乳業事件(東京高判平19・3・28) 累積格差の救済申立て、棄却した労委の判断は 不当労働行為性の有無 10年も遡る審査はムリ ★
組合活動が嫌悪され、昇給昇格が差別的に行われたとして不当労働行為の救済申立てに対して、中労委の行った棄却処分の取消しを求めた裁判の控訴審。東京高裁は、職分制度により、同性・同期・同学歴間での格差は認められないうえに人事考課が不適正とはいえず、10年以上も遡る各年度の格付行為から生じた格差も、除斥期間により審理対象にならないと判示した。
除斥規定 適用判断は当然 昇給昇格差別ない
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社(明治乳業株式会社)に勤務する労働者甲ほか31人は、明治乳業労働組合市川支部の組合員であったところ、会社が甲らの組合活動を嫌悪し、甲らを不利益に取り扱うため会社の人事制度(職分、賃金、人事考課制度)のもとで、甲らの昭和55年度から昭和60年度までにおける昇格・昇給(職分昇格・昇号給)を、他の市川支部組合員と差別して不利益に行い、結果として市川支部労働組合の運営に支配介入した不当労働行為である、などと主張し、東京都労働委員会に救済を申し立てたが棄却されたため、中央労働委員会に再審査を求めた。しかし、中労委も、平成14年1月9日付で一部を却下、その余を棄却した(本件命令)。そのため、甲らは本件命令の取消しを求めて、東京地裁に訴えを提起したが、平成16年5月31日全て斥けられたため、東京高裁に控訴した。本件はその控訴審判決である。
判決のポイント
本判決の争点は、第1に、労働組合法27条3項で「労働委員会は、前項の申立てが、行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることはできない」…
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