JR西日本尼崎電車区事件(大阪高判平18・11・24) 再教育受けた運転士が自殺、指導側に落ち度? 予見不可能で因果関係否定
2007.09.03
【判決日:2006.11.24】
電車の遅発を理由に安全運転の再教育を受けていた運転士が教育期間中に自宅で自殺したため、遺族が上級管理者や会社に損害賠償を請求した事案の控訴審。大阪高裁は、安全性確保の理念からミスを犯した社員に再教育を行うことは相当と判示。心理的負担を負ったことを契機に自殺に至る過程を予見することはできなかったとして、一審判決を支持し控訴を棄却した。
極めて特異なこと 内容や方法は相当
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Aは昭和51年にZ社に入社し、昭和62年のY社発足と共に同社に採用され運転士として勤務していた。B、C、Dは、Y社の従業員であり、平成13年8~9月当時、Bは、Aが勤務していた電車区(尼崎)の区長、Cはその首席助役、Dはその指導総括助役であった。
Y社では、運転士が事故または事故の芽とされるような運転をした場合には、運転士を乗務から外して事情聴取を行い、当該運転士に再教育が必要と判断された場合、日勤教育を実施することとしていた。
日勤教育の内容は、系統的な方針や方法論は無いが、大要、内勤室において、指導担当の上司より与えられた課題についてのレポート作成が主であった。また、教育期間は予め定められてはおらず、その終了の可否の判断は、日勤教育を命じた電車区の区長に委ねられていた。なお、運転士が乗務した場合に支給される乗務手当(平均月額約10万円)は日勤教育の期間中支給されないので、減収となる。…
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平成19年9月3日第2647号14面 掲載