高橋塗装工業事件(東京高判平18・5・17) 塗装作業中に転落、被災者の過失7割は相当か 元請の責任大きいと5割に
2007.09.17
【判決日:2006.05.17】
下請塗装業者やその社員の転落死傷事故についての損害賠償請求で、7割の過失を認定した一審判決を不当として控訴した事案。東京高裁は、安全帯未着用で生じた事故だが、同種事故が3カ月前にも発生し、労基署から安全管理の指導を厳命されたにもかかわらず、安全帯着用を指示したのみで、その徹底を怠った元請会社の過失は大きいとし、過失割合を50%に減じた。
安全帯の着用 指示だけでは 3月前にも同災害
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは地元でトップクラスの塗装業者で、S村から公民館ホールや保健センターの屋根塗装工事を請け負ったが、工事中に安全帯未着用で転落死亡事故を起こし、労基署から安全管理の徹底を指導された。Yは同工事の続行を断念し、個人営業の塗装業者であるX1との間で、未施工部分をX1が施工する旨の本件工事契約を締結した。
本件工事では、Yの代表者がX1から連絡を受けたり、村に提出する写真の撮影ほか工程の進捗状況を管理していた。YはX1に対し、ヘルメット、安全帯、登山用ザイル(安全帯の親綱)等の安全器具を貸与し、これを着用するよう指示したが、X1はこれを着用せず、X1の長男X2および期間限定で雇入れたAにも着用させなかった。
平成15年3月14日、X1ら3人は、保健センターの屋根の塗装作業を開始した際、西側屋根の表面に霜がおりて滑りやすい状態だったため、X1はX2、Aに対し、西側屋根に立ち入らないことを確認した。…
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平成19年9月17日第2649号14面 掲載