根岸病院事件(東京高判平19・7・31) 初任給引下げは団交事項でないとの地裁判断は 賃金格差生じ団結力に影響 ★
2007.11.05
【判決日:2007.07.31】
病院が新規採用者の初任給を引き下げたことについて、労組との団交応諾義務があるか争った事案の控訴審。東京高裁は、初任給額は組合員の賃金決定の重要な要素で、入社時期による大幅な賃金格差は労働者相互間に不満、あつれきを生む蓋然性が高く、組合員の団結力に依拠する労組にとって看過しがたい重大問題とし、一審判決を覆し義務的団交事項と判示した。
心理的あつれきも 関わり強いと判示
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
Xは精神科等を診療科目とする病院を経営する医療法人であり、Y労組は、昭和48年当該病院の職員によって組織された唯一の労働組合で組織率65%、組合員名簿非公開としている。
Xの常勤職員(医師を除く)の賃金は、基本給(本給プラス第二本給)と諸手当で構成され、職種別に新規採用者の初任給額を定めており、新規採用者の基本給は前歴に応じた経験加算等をして決定している。
常勤職員の新規採用年度以降の基本給は、初任給額に翌年度以降の春闘でY労組と妥結した本給の定期昇給分、ベースアップ分および第二本給増額分を加算のうえ決定し、平成7年度までの初任給は、原則として、前年度の初任給額に当該年度の春闘で妥結したベースアップ分を加算した額としていたが、同8年度から同10年度までの間はべースアップ分を加算をせず、初任給額を変更していなかった。…
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平成19年11月5日第2655号14面 掲載