独立行政法人国際観光振興機構事件(東京地判19・5・17) 海外勤務の実情知らない部長の考課で降格処分 主観的な評定で人事権濫用
海外職員の人事評価の際、評価書作成の不手際や態度などを理由に、直属の上司でない2次考課者である部長が降格処分を行ったもので、その効力を争った事案。東京地裁は、職務行動を把握するうえでは断片的であり、主観的な受け止め方が大きく、評価として重視するには危険と判示。裁量権を逸脱しており、人事権濫用により、降格を無効とした。
査定のルール逸脱 感情面を強く反映
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告会社は、国際観光の振興を図ることを目的とする独立行政法人、平成16年4月から、職員の処遇に人事評価を反映させる内容の新人事制度を導入した。人事評価の実施手順は、まず職員が自己評価し直属上司に提出、直属上司等が順次評価を加える等して管理部長に提出し、役員会で正式決定へと至るが、海外事務所の所属職員については、海外事務所の業務成績および成果の評価も加味され、その評価点に応じた一定の係数を乗じて、当該職員の最終的な評価点とされていた。
平成16年度人事評価における原告の評価は、海外職員として勤務した15年10月から16年3月までが対象期間だったが、原告は誤って海外職員用の基準等でなく、本部職員用の基準等で人事評価書を作成・提出し、直属上司のCを通じて本部管理部長のDに提出された。Dは、原告およびCに対し、期限を設けて人事評価書の再提出を要請したが、再度、不備のあるものが提出される等したことから、人事評価書が揃ったのは期限経過後であった。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら