リアルゲート事件(東京地判平19・4・27) 子会社代表らが競業会社、人材引抜きの賠償を 移籍勧誘は共同不法行為に
派遣会社の子会社の代表取締役と役員らが新会社を設立し10人の従業員を引き抜いたとして、不法行為を理由に損害賠償を請求した事案。東京地裁は、代表取締役の忠実義務に反し、役員らの従業員に対する移籍の働きかけや顧客への契約打診は共同不法行為に当たると判示。損害額は、退職者の補充期間を考慮し、1人当たり1カ月20万円の4カ月分を相当とした。
対顧客への打診も 損害は給与4月分
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲会社(㈱エクスプラネット)は、コンピュータプログラマーおよびシステム操作要員の派遣等を目的とする㈱ゲインが幹部社員育成のために「衛星企業」と称して設立した子会社の一つである。A、Bはそれぞれ、平成13年4月に㈱ゲインに入社した後、甲会社設立とともにその代表取締役、取締役となり、従業員らはいずれも平成15~16年に甲会社に入社したものである。
Aは経営方針を巡り㈱ゲインの代表取締役と対立したため、Bらとともに独立の意思を固め、同職種の派遣等を目的とする乙会社を設立した。
本件は、甲会社の代表取締役であったA、取締役であったB、マネージャーであったC、D、従業員であったE、Fに対し、共謀して会社を退職したうえ乙会社に移り、また、甲会社の従業員らに働きかけて乙会社へ移籍をさせ、その結果、甲会社に損害を与えたと主張して、A、Bに対しては取締役の忠実義務、善管注意義務違反または不法行為を理由に、マネージャーC、D、従業員E、Fらに対しては雇用契約上の誠実義務に違反した不法行為を理由に、乙会社に対しては代表者Aの不法行為による民法44条1項の責任を理由に、合計1億3000万円余の損害賠償の支払いを提起したものである。
AおよびBらは、上記行為は単なる転職の勧誘にとどまり、違法性はないと反論した。…
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