港湾労働安定協会事件(神戸地判平17・5・20) 労使協議で年金を減額、一方的と受給者が提訴 金額変更する規定なく無効
港湾労働者の年金を労組との協定に基づき月5万円減額したが、受給者9人が一方的減額は無効として提訴したもので、神戸地裁は年金制度規定に支給額や支給期間が明記されており、運営主体である協会の裁定時に年金額が確定するとし、労使合意の効力は受給権者に及ばないと請求を認容した。
裁定時に確定済み 合意の効力及ばず
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
1 港湾労働安定協会(以下「安定協会」)は、昭和55年1月、港湾運送事業に従事する労働者の雇用の安定と生活の安定を図るべく設立された団体であり、昭和60年4月、財団設立登記された。
2 安定協会は、社団法人日本港運協会(以下「港運協会」)と全国港湾労働組合協議会、日本港湾運送労働組合協議会(以下「組合協議会ら」)の確認の下設立され、港湾労働者年金制度(以下「本件年金制度」)を運営していた。
本件年金制度は、6大港および地方港における港湾運送事業の免許事業者および安定協会に適用され、適用対象者は適用事業に雇用されている労働者で本件年金の規程に定められた職種に従事する者であり、事業者は、適用対象者を雇用した場合、安定協会へ登録申請をしなければならない。適用対象者は前述の登録を経て登録者となり、後述3項の裁定を受けて受給権者となる。
受給権者への年金支給は、受給者の満60歳から満75歳の15年間であり、年金額は昭和55年から平成3年までに徐々に年額15万円から30万円に増加されていたが、増加改定についての明文の規定は無かった。…
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