エージーフーズ事件(京都地判平17・3・25) 飲食店長が自殺、過重労働が原因と遺族が提訴 実態知り得ても措置講じず

2005.10.17 【判決日:2005.03.25】
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 売上げ減少から他店への異動を求められ、うつ病に罹患し自殺したレストラン店長の遺族が過重労働が原因として損害賠償を求めたもので、京都地裁は業務過重によるストレス要因が積み重なったとし、労働実態や精神状態を知り得たにもかかわらず措置を講じなかった会社の過失相殺の主張も要求も斥けた。

経営者自ら出入り 過失相殺も斥ける

筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)

事案の概要

 1 甲は、レストランの経営、飲食、喫茶営業等を目的とする企業(乙)に昭和50年7月にアルバイトとして入社し、同年9月に正社員となり、昭和57年6月からT店店長、昭和61年2月よりS店チーフ、平成4年7月よりS店店長となった。甲は、明るく几帳面で責任感が強く、血縁者には精神疾患の既往症を有する者はなく、甲自身、平成6年5月に自律神経の機能障害と診断されたが、他に精神疾患の既往歴は無かった。

 2 S店は乙の経営する7店舗のうち最も売上げの多い店舗であり中心店舗であった。また、S店は、店長甲の他に、チーフ(1人)、調理担当の従業員(4人)、洗い場担当のパートタイムまたはアルバイト(3、4人)、接客担当のパートタイムまたはアルバイト(10~15人)およびその纏め役であるマネジャー(2人)の人員体制であった。乙において店長の出勤時間の定めや指示はなかったが、タイムカードにより出退勤は管理されていた。また、店長の給料は、基本給および役付手当の定額であって、時間給ではなかった。

 3 甲は、店長として、店長会議への出席、S店従業員の手配・確保、店舗営業管理全般、注文・調理・食事提供の管理および采配、役員への対応を行っており、休日は月2日程度、1日の平均労働時間は約12時間に及んでいた。甲は店長であり、その裁量で自らの業務の負担を一定限度軽減することはできたが、店長の業務内容からして容易ではなく、また、甲が殊更に自らの業務を過重にしていたわけではなかった。

 4 平成5年と比較して、平成6年、7年とS店の売上げが減少していたことから、乙社長丙は甲に対し、売上げ減少について話し合い、甲に営業活動をさせていたが十分ではないと判断し、甲に対しS店よりN店への異動を内示した。平成8年1月頃、甲は一旦了承したものの、その後数回に亘り、丙らに抵抗し、丙らが強く説得していた。…

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平成17年10月17日第2557号14面 掲載
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