互光建物管理事件(大阪地判平17・3・11) マンション住込管理員が居室駐在時の手当請求 待機時間とは評価できない
マンション住込み管理員が所定時間外の夜間巡視や居室駐在時間は、時間外労働もしくは待機時間だとして割増賃金の支払いを求めたが、大阪地裁は居室での過ごし方の自由は保障されており、発生する業務も臨時的なもので待機時間とは評価できず、使用者の指揮監督下の労働時間とは認められないとした。
臨時的な業務のみ 過ごし方は無制約
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
マンションの住込み管理員(所定労働時間は月曜日から土曜日の午前9時から午後5時まで、休日は日曜日および祝日)である原告が①毎朝6時30分からの巡視、午後5時以降の住人や来客への対応、夜間の巡視、日曜日のゴミ置場整理等の業務を行い、②所定労働時間外も緊急事態の発生に備えて管理員居室に駐在し、実際、夜間の火災等への対応が必要となったことがあるとし、①の所定労働時間外の業務が労働時間(時間外労働、休日労働)に当たる、②の所定労働時間外の管理員居室駐在時間もいわゆる手待時間で労基法の労働時間に当たるとして、被告会社に割増賃金の支払いを請求したケースである。
判決のポイント
(1)労働基準法32条の労働時間とは、労働者が、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうが、①所定労働時間外に労働者が使用者の業務の範囲に属する業務に従事した場合に、それに要した時間が前記意味の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、②実作業に従事していない不活動労働時間が前記意味の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価しうるか否かにより客観的に定まるものというべきである。
(2)住込形態の管理方式…は、管理員居室で日常生活を営ませることにより、緊急事態に迅速に対応することを目的としている(が)原告の管理員居室での過ごし方について特段の制限が設けられていた(わけではなく)滞在場所にも特段の制限があったわけではない。したがって、原告が所定労働時間外に管理員居室で過ごす時間は、一般人が自宅で過ごす時間と同様に、その自由な利用が許された時間であるといえる。
原告は、緊急事態が生じた場合には、対応が義務づけられているが、このような事態が生じることは希であり、この対応のため勤務時間外の過ごし方に特段の制約が課されている(外出禁止とか飲酒禁止)わけではないから、…日常生活時間を緊急対応のための待機時間(手待時間)と評価することはできない。
(3)また、原告が所定労働時間外に行った種々の業務(事案の概要①)は、…
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