藤沢薬品工業事件(大阪地決平16・11・12) 男女差別事件で賃金台帳など資料の提出を要求 格差の立証に必要と認める
賃金などの男女差別事件に関して、その照明のために賃金台帳など資料提出を申し立てた事案。民訴法上の「自己利用文書」を理由に拒否する経営側に対し、大阪地裁は一部文書に会社主張を認めつつも、情報の開示により人事管理上で看過できない不利益は生じないとして、大筋で請求文書の提出を命じた。
人事管理に支障ない 開示の範囲を限定
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
違法な男女差別により昇格、賃金差別を受け(SⅠ級)昇格者研修を受けられなかった等が労働契約の債務不履行ないし不法行為とする損害賠償請求およびSⅠ級昇格者研修を受講させるよう求める裁判中に、原告は文書提出命令の申立てを行った。申立ての趣旨は、原告が入社した年度の前後各2年間の同学歴の男性社員の賃金台帳、労働者名簿、会社保管のコンピュータデータの「人事情報」のうち「資格歴」「研修歴」についての電子データまたはそれを印字した文書である。
判決のポイント
賃金台帳及び労働者名簿は、…専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であるとはいえない。したがって民事訴訟法220条4号ニには該当しない。
資格歴等は、専ら相手方内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない情報であるということができる。しかしながら、…情報が開示されることによって…看過し難い不利益が生じるおそれがあるとまでは認めるに足りない。そうすると、本件資格歴等は、民事訴訟法220条4号ニには該当しない。
賃金台帳を開示することによって、…また、本件資格歴等についても、これを開示することによって、相手方の事業活動に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるとまでは認められない。そうすると、本件賃金台帳及び本件資格歴等は、民事訴訟法220条4号ハには該当しない。…
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