松下電器産業事件(大津地判平16・12・6) 企業年金一律2%引下げは契約に違反し無効か 裁量の範囲内で相当性あり
経営悪化により利息相当分などを負担する企業年金の給付を一律2%減額する措置に対し、受給者3人が引下げは年金契約に反し無効と訴えたもので、予測以上に業績などが悪化した場合、制度運営者は加入者の同意の有無に関わらず合理的裁量範囲内での変更は許されるとし、給付引下げの相当性を認めた。
会社負担が大きく 破綻するおそれも
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xら3人はY社のOBであるが、Y社の福祉年金制度(自社年金)に加入し、年金契約を締結していた。
同制度は、希望者が加入するもので、退職金の一部を原資として、一定期間、預り原資の取崩分と一定利率による利息相当分の合計を基本年金として支給し、さらに基本年金完了後、終身年金として一定額の年金を支給するものである。なお、Y社の福祉年金規程23条1項には、「将来、経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合、あるいは法制面での規制措置により必要が生じた場合は、この規程の全般的な改定または廃止を行う」との定めがある。
平成14年、Y社は、年金制度の存続のため社会水準を踏まえた見直しを行う必要があるとして、在職者に関して本件年金制度を廃止してキャッシュバランスプランを導入し、受給権者に関しては9月分から給付利率を2%引き下げた。
Xらは、年金支給額の減額は年金契約に違反し違法・無効であるとして減額前の年金額の支払いを求めて訴えを提起した。
判決のポイント
1 将来給付の訴えの適法性について
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り提起することができる(民訴法135条)。…
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