ジェイティービー事件(札幌地判平17・2・9) 出張旅費不正受給で懲戒解雇の営業所長が訴え 経理責任者として処分相当
営業所長の出張費不正受給が発覚し懲戒解雇したところ、処分は不当と訴えたもので、経費節減でやむなく流用との主張に対し、経理責任者の地位に照らし懲戒解雇事由に相当としたうえ、行為は悪質重大で処分が過重に過ぎるということはできないと判示した。判例は金額の多少に拘らず厳しい傾向にある。
謙抑性に反しない 金額の多少拘らず
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は旅行業等を目的とする株式会社で、甲は昭和43年に入社、函館支店、北海道支社の各勤務を経て、関連会社の㈱ジェイティービートラベランド(以下「出向先会社」)に出向、平成14年4月から平成15年5月まで釧路営業所長、平成15年9月当時、旅館ホテル事業部営業企画部調査役の地位にあった。
会社は、平成15年9月19日、「甲が釧路営業所所長として在任中、経理責任者の立場にありながら、平成14年7月から平成15年5月にかけて合計16回、出張旅費(交通費、日当、宿泊料を含む)の不正受給合計23万8500円を繰り返していた」として、甲の行為が会社の就業規則の定める「社金を窃取着服した場合」に当たるとして甲を懲戒解職した(本件懲戒解雇)。
これに対して、甲は、以下の①ないし④に記載した事実関係に照らすと著しく不合理で、解雇権の濫用として無効(労基法18条の2)を主張して提訴した。
①処分の相当性…懲戒解雇を含めた懲戒処分は、規律違反の種類、程度に応じて相当なものでなければならず、均衡を欠く加重な処分は懲戒権の濫用として無効であるところ、本件で甲の行った行為は横領着服といった類ではなく、経費節減のためにやむなく行った旅費等の流用で、流用額は15回で合計22万6500円に過ぎず、21万4500円については会社の指示に従い全額戻し入れており、出向先会社に損害は生じていない。
②処分の謙抑性…懲戒処分に当たっては、当初から重い処分をもって断ずることがあってはならず、軽い処分から段階的に選別することが求められる。特に懲戒解雇は労働者に与える不利益が大きい処分であるから、その情状が悪質かつ重大で、軽い処分に付する余地がまったく認めがたい場合に限るべきである。会社の就業規則は懲戒事由を段階的に定めており、甲の行為態様(横領着服といった利己的行為ではないこと)に鑑みると、「軽い処分に付する余地がまったく認めがたい」場合とは到底いえない。…
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