静岡第一テレビ事件(静岡地判平17・1・18) 解雇無効が確定し復職後に争訴中の慰謝料請求 使用者の処分の裁量範囲内
諭旨解雇無効が最高裁で確定後、従業員が職場復帰までの精神的苦痛に対する慰謝料を請求したケースで、懲戒解雇の私法的効力否定イコール不法行為ではないとし、懲戒処分には使用者の判断・裁量に委ねられる部分があるとしたうえ、就業規則違反行為は軽微ではなく会社に過失は認められないと棄却した。
不法行為に当らず 軽くない就則違反
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、別件訴訟により無効が確定した諭旨解雇が不法行為に該当するとして、解雇時から復職時までの精神的苦痛に対する慰謝料請求がなされた事案。
原告は昭和54年5月、被告に雇用され、平成11年8月から編成部ライブラリー室担当部長の職にあった。被告は、原告に対し、平成11年9月14日付けで、諭旨解雇とする旨の通知をした。原告に対する諭旨解雇事由は、①スポンサーの接待に関する3人分18万円相当の旅行クーポン券をスポンサーに交付せず、現金化して会社に返還せず、報告もしなかったこと、②スポンサーをゴルフに招待するため50万円必要であるとして会社から旅行代理店にこれを振り込ませたうえ、旅行代理店から当該金員を受領してスポンサーに交付したこと、③招待旅行中に招待者の一人に暴言を吐いたことの3点であった。
原告は、本件解雇が無効であると主張して、被告に対し労働契約上の地位の確認と未払賃金の支払等を求める訴訟を静岡地裁に提起し、平成13年3月、本件解雇は無効で、原告が労働契約上の地位を有することを確認し、未払賃金の請求を一部認容する判決を受けた。
被告は判決を不服として東京高裁に控訴したが控訴棄却の判決を受け、最高裁に上告したが上告不受理の決定を受け、これにより一審判決が確定した。
被告は、平成14年3月、原告を編成部ライブラリー室担当部長として復職させるとともに、原告に対し本件解雇後復職時までの未払賃金および賞与を支払った。
判決のポイント
権利濫用の法理は、その行為の権利行使としての正当性を…
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