学究社(定年後再雇用)事件(東京地裁立川支判平30・1・29) 定年後はコマ給、「賃金7割減」違法と差額請求 業務や責任異なり減額容認
定年後再雇用で年俸制をコマ給とされた塾講師が、賃金が7割以上減ったとして差額を求めた。裁判所は、定年までの勤務意欲を削ぐような極めて過酷な労働条件とはいえないとしたうえで、正社員とは業務内容や責任の程度に差があり、不合理とはいえないと判断。授業のみ担当する嘱託講師に対し、正社員は変形制により保護者対応、研修会出席も義務付けられていた。
嘱託は授業のみで 条件過酷といえず
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、中学、高校および大学の受験指導を行う進学塾を経営する株式会社である。Xは、Y社と期限の定めのない雇用契約を締結した者であり、昭和57年より平成27年2月28日に定年退職するまで、正社員として在職した。Xの正社員時の給与については年俸制が採用されており、平成25年度には644万7600円、平成26年度には638万3912円であった。Y社には、再雇用後の給与について、会社との契約締結の際に会社が決定する旨の就業規則等が整備されていた。
平成27年1月末、Xは、Y社のA校の校長より、同年2月から開始される新年度の授業の実施について依頼された。そして、同年3月4日、Y社専務執行役のBは、Xに対し、「定年後再雇用制度について」と題する書面を交付し、定年後再雇用制度および再雇用した場合の給与等について説明し、Xに対し意向を尋ねたところ、Xは検討する旨、回答した。なお、書面には、本人の希望があり、Y社が示した雇用条件をもって勤務する場合に定年後の再雇用が成立すること、契約期間は原則1年であること、勤務形態はフルタイムとパートタイムの2種類があること、給与形態は月給制と時間給制の2種類があること、給与は退職前の30~40%前後が目安になる旨の記載があった。Bは、Xに対し、時間講師(原則、Y社から与えられた授業のコマのみを担当する者)での勤務を前提とした再雇用契約書を交付したが、Xは署名押印しなかった。…
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