練馬交通事件(東京地判平16・12・27) 年休取得で手当カットは違法、減額分を請求へ 不利益の回避は“努力義務”
年休取得による皆勤手当と安全服務手当のカットは労基法違反として減額分の支払いを求めたが、経済的不利益回避は使用者の努力義務であって私法上の効果を否定する効力は有しないとし、年休権行使を抑制するものではなく、法の趣旨から望ましくはないが公序に反し無効とはいえないと判示した。
不支給の扱い有効 権利行使抑制せず
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被告会社は、タクシー乗務員が交番表(月ごとの勤務予定表)に定められた出番をすべて乗務した場合には皆勤手当5500円を支給し、出番すべて無事故無違反で乗務した場合には安全服務手当9000円を支給していた。他方、被告は、年次有給休暇権の行使を欠勤と同視し、就業規則に基づいて、乗務員が年休権を1出番行使した場合には、皆勤手当全額および安全服務手当のうち4500円の合計1万円を支給せず、同じ月に年休権を2出番以上行使した場合には、上記に加えてさらに安全服務手当を4500円支給しなかった。このため、被告では、これら2つの手当について、年休権を行使した場合には行使しなかった場合よりも1カ月で最大1万4500円を減額されることとなった。
原告ら4人は、年休権の行使を理由に安全服務手当および皆勤手当を減額(賃金総支給額に比して最大7.25%減額)されたことは、労基法39条、136条に違反し、民法90条により無効であるとして、減額分の支払いを請求した。
判決のポイント
労働基準法136条によれば、使用者が労働者の年休権行使を何らかの経済的不利益と結びつける措置をとることは、その経営上の合理性を是認することができる場合であってもできるだけ避けるべきであるが、…
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