誠昇会北本共済病院事件(さいたま地判平16・9・24) 准看護師の自殺は上司のいじめ、病院に責任? 防止策怠り配慮義務違反
2005.06.06
【判決日:2004.09.24】
21歳の准看護師が上司から長期にわたるいじめを受け自殺したと両親が上司と病院に対し損害賠償を求めたもので、病院についてはいじめ防止措置を怠った安全配慮義務違反を認め、精神的苦痛に対する慰謝料500万円を認定しつつ、自殺の予見可能性は否定し死亡による損害賠償責任はないと判示した。
精神的慰謝に限定 死亡による損害賠償責任ない
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、准看護士として勤務しながら看護専門学校に通学していたTが、病院の物品設備部門責任者であるOの継続的ないじめにより自殺したとして、Tの両親が被告Oに対しては不法行為、病院に対しては安全配慮義務違反を理由として損害賠償を求めた。判旨は、被告Oについて不法行為責任を認め、さらに被告病院についても安全配慮義務違反による責任を肯定した。
判決のポイント
1 被告病院は、Tに対し、雇用契約に基づき、信義則上、労務を提供する課程において、Tの生命及び身体を危険から保護するように安全配慮義務を尽くす債務を負担していたと解される。具体的には、職場の上司及び同僚からのいじめ行為を防止して、Tの生命及び身体を危険から保護する安全配慮義務を負担していた。本件についてみれば、被告Oらの後輩に対する職場でのいじめは従前から続いていたこと、Tに対するいじめは3年近く及んでいること、…
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平成17年6月6日第2539号14面 掲載