渡島信用金庫事件(札幌高判平16・9・29) 係争中に賃金仮払し就労拒否、支給分は損害か 労務の不受理で損失に相当
懲戒解雇処分に対する仮処分や救済命令に従わず、当該職員の就労を拒否しつつ賃金を支払い信用金庫に損害を負わせたとして出資会員が代表者を訴えた事件の控訴審で、一審が労務の対価としての賃金でないとしたのに対し、雇用契約が存続し労務提供不受理の賃金相当分3000万円強を損失と認定した。
善管注意義務違反に 信金理事に賠償命令
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、A信用金庫の出資会員である一審原告らが、同金庫の代表理事である一審被告らに対して提起した会員代表訴訟である。一審原告らが主張した善管注意義務違反、忠実義務違反の内容は、信金労組の委員長等を歴任している訴外Gの2次にわたる解雇が無効であったことに伴う賃金相当額等の損害を生じさせたことにある。
第一審(函館地判平15・11・27)は、1次、2次解雇ともに不利益取扱い、支配介入の不当労働行為に該当し、被告らには善管注意義務違反、忠実義務違反があるとしつつ、「本件賃金を支払っていた期間中、一方ではGとの間の雇用契約関係を解消する意思を有していたものと認められ、もはやGにより給付される労務の対価として本件賃金を支払っていたとはいえない。このようなA信用金庫の認識を前提とすれば、本件賃金がGにより給付されるべき労務の対価であり同価値性を有するということはできない」として、遅延損害金部分の請求を除き、その余の請求を相当因果関係のある損害ではないとした。そこで、一審原告らが控訴した。…
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