ヤチヨコアシステム事件(大阪地判平16・8・6) 自己都合から懲戒解雇へ、退職金の支給も拒否 合意成立後の変更は無効
2005.05.09
【判決日:2004.08.06】
営業所長が自己都合退職した際、伝票類を持ち出したことを理由に懲戒解雇に切り替え退職金の支払いを拒否した事案で、退職申入れ時に合意退職が成立し、雇用契約終了後の懲戒解雇の意思表示は無効で、顕著な背信性は認められないとして請求退職金全額の支払いを命じた。名誉毀損による慰謝料は却下。
顕著な背信性ない 全額支払いを命令
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、事務機械器具販売会社であるYの営業所長であったが、自己都合により会社を退職した。その際、売上伝票控えの写しのファイル5冊を持ち出したが、翌日、私物に混じっていた旨を申し出てこれを返却している。退職届提出の6日後、Xは競業会社を設立してその代表取締役に就任した。Yは同日、売上伝票等5冊の窃取等を理由として懲戒解雇の通知をした。
Xは、自己都合により会社を退職したものであるから、その後になされた解雇は無効として、懲戒解雇無効の確認および自己都合の退職金226万4000円、さらに理由のない懲戒解雇通知により名誉を著しく損なわれたとして慰謝料100万円の支払いを求めて提訴した。
判決のポイント
1 退職合意の成立
平成14年12月11日、Xが15日付退社を述べ出たところ、Y社の常務は、Xに対し、社長の指示により即日退職してほしい旨述べ、…
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平成17年5月9日第2536号14面 掲載