独立行政法人N事件(東京地判平16・3・26) 単純作業での復職認めず、期間の満了で解雇に 将来も職務遂行の保証なし
私病休職者が主治医による復職可との診断書を提出したが、通常の勤務ができない状態と判断し、休職期間満了により解雇した事案で、判決では、復職可否の基準は、本来の職務について検討するべきとし、軽易な作業を続けても十分な職務を遂行できる保障はないと判断、解雇権の濫用にはならないとした。
復帰可否の判断は本来業務を基準に
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被告が原告たる職員につき私病による休職を命じ、休職期間が満了したことを理由に解雇したところ、原告が、解雇前に休職事由は消滅しており、解雇は無効であるとして地位確認等を求めたものである。
原告は被告に採用後、6カ月の試用期間経過後の半年間に56日の病気休暇を、翌1年間に56日の病気休暇を取得した。被告の業務は、貸付等の金融取引、財務調査、専門的知見の普及業務であり、職員には金融・財務・統計に係る知識・経験を駆使したある程度高度な判断が要求され、かつ、取引先との折衝等を円滑に行う能力が求められていた。しかし、原告が、これまで担当した業務は、書類のコピー・製本・書類の受渡し、単純な集計作業、会議のテープ起こし等の機械的作業であった。
原告は平成12年に入り不安や焦燥感による欠勤が多くなったため、同年9月、被告が原告、原告の父とともに主治医と面会して原告の症状について話を聞いたところ、10年以上状況は変わらず、本来の病名は人格障害であり、被告は原告に対する職場および病院でのテストを踏まえ、原告に休職を発令した。…
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