昭和電線電纜事件(横浜地裁川崎支判平16・5・28) 退職勧奨に応じたが、錯誤だったと地位確認へ 処分されると誤信して合意
退職勧奨を受けた労働者が自己都合退職したが、錯誤による意思表示を理由に、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めたもので、解雇事由が存在しないにもかかわらず、退職届を提出しなければ解雇処分になると誤信しての意思表示と判断、合意の動機に錯誤があったとして賃金請求を認容した。
勤務不良に当らず 解雇事由なかった
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Y会社は電線電纜、光ファイバーケーブル等の製造販売等を業とし、Xは昭和38年4月に入社、平成12年訴外昭和サイエンス(以下サイエンスという)に出向、工事記録の誤廃棄や同僚への暴言などを理由に同13年12月10日、出向が解除され、関連会社の面接を受けるように指示されたが、面接日時に遅れるなどしたため受入れを拒否された。
Xは、平成13年12月25日、人事勤労グループ長であるAから退職勧奨等を受けた。翌26日、AはXに対し、Xを斡旋する職場はなくなった、Y会社としてはXに退職してもらうという選択肢しかない、Xの意思で退職するならば規定の退職金に3カ月分の給与を加算する、Xが退職する意思がないなら解雇の手続をすることになる、どちらを選択するかXで決めて欲しいこと等を告げた。同月28日、Xは自己都合退職を理由に退職手続申告書を提出、X・Y会社間に退職の合意が成立し、同14年1月8日付でY会社を退職した。
同年2月1日、XはY会社から退職金の振込送金を受けたものの、同年4月11日、退職の意思表示を取り消し、同退職金をY会社に提供したが、Y会社から受領を拒否されたため同月12日、退職金を供託した。…
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