海外漁業協力財団事件(東京高判平16・10・14) 役員にトラブル告発、停職処分の職員が提訴へ 誠実性なく秩序乱す行為
勤務不良の調査活動中に起きたトラブルで、事件に関する告発文書を役員に送付し停職となった職員が、処分の無効確認等を求めたもの。自己の有利性確保が告発の目的で、業務に支障が生じるなど職場秩序維持を定めた就業規則違反に該当、停職中の賃金支払いを容認した地裁判断を覆し処分を有効とした。
自己の利益が目的 懲戒権濫用でない
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成11年8月から年休(時間単位の取得が可能)を利用して、連日、早退したり、あるいは全休するようになったが、理由を聞かれても答えなかった。Xは、12月になって、8月に交通事故にあい通院加療していたが、年休もほとんどなくなってしまったので傷病休暇を取得すると言い出し、12月10日から翌年3月9日まで欠勤(傷病による場合3か月までは基本給全額支給)した。
Xの勤務するY財団法人は、上記経緯等に照らしXが療養に専念しているのか疑問をもち、調査会社に調査を依頼したが、調査員が尾行した際、Xの妻に気づかれ、逃走しようとして妻に全治1週間の負傷をさせるということがあった。Xはこの件につき、話し合い等による解決を求めていたが、進捗せず、平成14年5月、XはYの非常勤理事、監事および評議員に対し、現常勤理事者たちが卑劣で不当かつ違法な行為を行なった、Yに自浄能力がないなどと記載した文書を送付した。Yは、Xの行為はYの名誉と信用を著しく傷つけるものであるとして、Xを3日間の停職処分とした。
Xは処分の無効確認、停職に伴う不支給の賃金・慰謝料の支払い等を求めて提訴した。…
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