静岡富士カラー他2社事件(静岡地判平16・5・20) 全員採用に固執、営業譲渡の協議整わず解雇へ 偽装との労組主張を斥ける
業績不振で営業譲渡・会社解散を株主総会で決議、半数の社員をグループ子会社で採用すると提案したが、全員採用を主張する組合は面接を拒否、協議が整わずに解雇した事案で、経済合理性に基づく経営判断からの解散と認定、仮に整理解雇要件が必要としても要件を満たしていると組合の主張を斥けた。
業績悪化での解散 整理要件も満たす
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
原告ら(16人)は、カラーフィルムの現像処理を目的とする被告Y1会社の従業員であった。Y1会社(Y3会社の100%子会社)は、ミニラボの増加およびデジタルカメラの台頭により、売上高回復の見込はないとの判断から、企業存続を断念し、被告Y2会社(Y3会社の子会社)に営業全部を譲渡し解散する旨を決議した。
Y1会社は、原告らの所属組合に対し、会社を解散し、営業全部をY2会社に譲渡することおよび社員の半数についてY2会社で採用するよう要望していく旨を通知した。Y1会社の臨時株主総会においてY2への営業の全部譲渡および会社解散決議がなされた後、Y1会社は組合と社員の雇用問題等について団交を重ねたが合意に至らず、Y1会社は原告らに対し、解雇予告を行った。
これに対し、組合は、解雇撤回、解散延期を要求し、労使協議がまとまらない限りY2会社の採用面接を受けないこと、組合の要求は希望者会員の採用、退職金2年分加算であるとの要求を繰り返していた。Y1会社は、組合が、その要求を変えない限り、当初予定どおり会社解散・営業譲渡により原告らを解雇する旨回答した。
そこで、原告らが、本件会社解散・営業譲渡は、組合を排除するための偽装であり解雇は無効であるとして、Y1会社、Y2会社に対し、労働契約上の権利を有することの確認等を提起した。請求棄却。…
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