泉レストラン事件(東京高判平30・5・24) 割増賃金を手当に含む、何時間か不明で効力は 「残業代3割」込みも有効に
基本給、業務手当、資格手当の各3割を固定残業代として採用された元従業員が、時間外労働数が不明で割増賃金が支払われていないと訴えた。東京高裁は、定額手当制では対応する時間数を特定する必要はないと判断。基本給に組み込む定額給制とは異なるとした。手当の性質に照らして7割相当を「通常の賃金」としても不合理なところはなく、労基法37条に反しない。
時間数は特定不要 通常賃金と区分可
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
一審原告は、平成24年12月から26年11月までの期間の時間外、休日および深夜の労働の割増賃金が支払われていないと主張して、未払割増賃金、付加金等の支払いを求めた。
一審被告は、時間外労働等の事実を一部否認し、平成26年3月までは月俸に割増賃金(固定残業代)が含まれていたこと、同年4月以降は、原告は管理監督者の地位にあったことなどを主張した。
一審原告は、平成26年12月に退職し、退職時は料飲部副部長であった。
一審(東京地判平29・9・26)は、雇用契約書に明記された時間外勤務手当額は固定残業代として有効であると判断し、付加金の額は、割増賃金元本額の5割が相当と判断した。
判決のポイント
一審原告と一審被告は、定額の時間外手当に関する合意を含む雇用契約を締結しているところ、上記合意が給与規程に優先して…労働関係を規律する…。…上記解釈は、各賃金費目(基本給、業務手当、資格手当)のいずれも3割を固定残業代と定める給与規程を踏まえて締結された雇用契約における当事者の意思解釈として合理的なものである。
未払割増賃金の大半が平成26年4月以降に発生していることからすれば、割増賃金の未払が長期間放置されてきたものではないという意味において、一審被告の悪質性が高いとまではいえないし、上記時期以降に未払割増賃金が発生することになったのは、一審被告において、一審原告を管理監督者として扱ったために、他の社員同様の定額残業代の手当をしていなかったとの事情も一因となっているところ、一審原告には業務権限や労働時間の管理において一定の裁量が認められており、…
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