名港陸運事件(名古屋地判平30・1・31) 復職可能の診断書、本人希望で作成と退職扱い 業務遂行できるほどに回復
がん治療による休職期間満了の退職を不当として、元運転手が地位確認を求めた。復職可能とした主治医は、会社に「本人の希望」で診断書を作成したと述べた。裁判所は、年齢や経験、産業医の意見を勘案し所定労働時間内に限り、健康時と同様に業務遂行できると判断。退職前に改めて本人と面談したり、指定医の再受診を命じなかった会社の対応は手続的相当性を欠くとした。
所定勤務支障なし 産業医は就労支持
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、一般貨物自動車運送事業等を目的とする株式会社である。Xは、昭和34年生まれの男性で、平成20年11月21日に職種をトレーラードライバーと定めて期間を定めずY社に雇用され労務を提供してきた労働者であり、労働組合の組合員である。
Xは、平成26年3月にA病院で胃癌を宣告され、同年4月22日に転院先のB病院で胃の全摘出手術を受けた後、同年5月にA病院に戻って入院加療を続け、同年7月31日に一旦退院した。同年8月21日、Y社はXに対し、同日付で私傷病休職に付することを通知し、平成27年10月20日までの休職命令を発した。
Xは平成27年2月にA病院に検査目的で再入院した後、症状に特に変化がなかったため、同年6月1日に同病院を退院した。同年8月28日、A病院のXの主治医A1は、診断書を作成し、それには病名を「胃癌術後」とし、「向後22日間(9月1日から9月22日まで)安静加療を要す。9月23日以降仕事に復帰可能です」と記載されていた。右傍線部はA1医師の手書きによるものである。…
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