近鉄百貨店事件(大阪地判平11・9・20) 部長待遇職から課長待遇職への降職は不法行為か 裁量権濫用で賠償認める
2000.01.17
【判決日:1999.09.20】
厳格さ要求される 給与処遇の引下げ
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成6年7月に55歳になり、現役職の庶務部長に残れると期待していたが、部長待遇職となったため、仕事に対する意欲を喪失し、上司との人間関係等も円満を欠くようになった。そこで、Y社はXに転進援助制度による早期退職を勧奨する一方、平成8年9月、勤務実績の不良を理由に課長待遇職に降格した。さらに、翌年8月、Y社はXに出向を命じたが、Xはこれに応じず、前記制度の適用を受けて退職した。
Xは、部長待遇職から課長待遇職への降格は不法行為もしくは債務不履行であり、また、退職を強要された点についても不法行為が成立するとして、損害賠償を請求して提訴した。
判決のポイント
1 使用者には、昇進、降格という人事権の行使について一定の裁量が認められるが、本件降格は給与が1カ月4万8000円減額されるという不利益を与えるものであるうえ、待遇職は管理職ではないことから、待遇職の昇進、降格についての裁量は、管理職の昇進、降格についての裁量と比較すれば狭く解されるべきである。…
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平成12年1月17日第2280号13面 掲載