鶏鳴新聞社事件(東京地判平11・3・29) 取締役が従業員を兼務していたと退職金を請求 認めるに足る証拠はない
2000.02.07
【判決日:1999.03.29】
雇用保険料控除は被告会社の誤納付
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、新聞社の取締役であった原告が、在任当時会社の従業員を兼務していたから従業員退職金の権利を取得したと主張し、また、原告と会社代表者は、会社が原告に対し、原告の退任時に、その時点において算定した会社代表者の退職慰労金相当額の9割を支払う旨合意していたと主張して、会社が株主総会決議に基づいて原告に支給した退職慰労金額との差額の支払いを請求した事案である。
判決のポイント
①被告の退職手当規定上、取締役就任時には従業員としては退職することを前提とする退職金支給規定が置かれていること、②原告自身も取締役就任に際し、右被告退職手当規程に基づく退職金名目の金員の支払いを受けていること、③原告は中小企業退職金事業団に対し、被告を退職したとして退職金受給の手続きを行っていること、④原告は、取締役就任後、被告代表者の指揮命令を受けず、自ら経営判断を行い、実質的にも被告の経営の中心的な役割を果たしていたと認められること等の事実を総合すれば、原告は、取締役就任時に従業員としては退職したもので、被告代表者との間で使用従属関係にはなく、従業員を兼務しない取締役であったというべきである。…
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平成12年2月7日第2283号13面 掲載