協生証券事件(東京地判平11・10・29) 上司へ侮辱的発言繰返す社員に5日間の出勤停止 裁量権の濫用はなく有効
言動が常軌を逸し解雇にさえ値する
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
証券業者であるY社は、社員であるXが、①平成7年1月から同年10月までの間、M次長に対し、少なくとも1カ月に1回以上、大声で暴言を吐き室内を騒然とさせ、その都度、たしなめられたが改めなかった、②平成7年11月30日、M次長に依頼した顧客の電話をしてくれなかったとして、M次長に対し「やる気がないのか」、「表へ出ろ」と怒鳴った、③同年12月1日S部長とK部長が話し合っていた際、いきなり「煙草を止めろ」と怒鳴り出したので、S部長が「何を言うんだ」とたしなめたところ、「表へ出ろ」と大声を出した、④同月14日、S部長が来客と懇談していたところ、いきなり「席をずらせ」と言ったため、S部長が「お前には関係がない」と言ったが、承知しないため、止むをえず来客に席を外してもらった、⑤同月18日、T監査部長に対し「社員ばかりペナルティを問題にして、役員のペナルティ制度はどうなっているんだ」などと暴言を吐いたうえ、殴り掛からんばかりの姿勢を示した、⑥平成8年1月16日、A常務、M常務、A部長、S部長が、Xの言動について話をしたところ、「会社で調査するなら警察を立ち会わせろ」などと言い、更にS部長に対し、「ふざけるのではない」とか「てめえ、何をしていたんだ。承知しないぞ」などと暴言を吐いた、⑦同月22日、突然、大きな音を立てて机を叩き、わめきだしたため、S部長が来客中だから大声を出すなと注意したが、「ここでいい、来客など関係ない」などと騒ぎ立て業務を妨害した、⑧同年3月25日、大声でわめいたので、M次長が注意したところ、出向中のM次長に対し「K生命に帰れ」などと暴言を吐くだけで、注意に従わなかったため、同月28日、Xに対して、同年4月1日から同月5日までXの出勤を停止し、その間における給与を支給しない旨の処分を行った。…
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